愛による全面受容と心の癒しへの道(88)

峯野龍弘牧師

第5章 心傷つき病む子供たちの癒しへの道

Ⅵ. アガペーによる全面受容とその軌跡(自立への7ステップ・法則)(前回に続く)

■アガペーによる全面受容の軌跡と癒しへの7ステップ(法則)
<ステップ7> 自己変革への勇気ある挑戦の開始

さて、このような悲しい憐れな状態の中に長い間幽閉されてきた彼らが、既に学んで来たように、「アガペーによる全面受容」の積み重ねの中で、徐々に癒され、もとより生まれながらにして彼らの内に存在していた美しい純粋感性を復元すべく、癒しへのスッテップを一段一段登り来ることによって、何と驚くばかりの生涯上の一大飛躍を経験するようになるのです。それがこの「自己変革への勇気ある挑戦」です。前述したように彼らにはこのような自己変革など全く望めない傷つき病める症状が支配していたのです。彼らは他人によって自己が変革されることなど絶対に望みませんでした。のみならず自分自身で自分を変革して行くことなど、全く不可能でした。ところが何と「充足」から「安息」へ、更には「深みの安息」から「ゆとりの造成」にまで進んで来た彼らには「冷静で客観的な自己への正しい位置づけ」が可能となり、「謙虚な自己認識と自己受容」さえ出来るようになって来たのです。そして遂にまったく自他ともに不可能だと思い、諦めていた「自己変革」へ向かっての勇気ある挑戦が始まるのです。これは周囲の人々の目にはまさに「奇蹟」のようにさえ思われる出来事なのです。しかし、これは「奇蹟」でも何でもありません。すでに本書において学んで来たように、これこそ「アガペーによる全面受容の法則」と言うべきものであって、「アガペー」に「アガペー」を積み上げ続けるところでは、いつの時代でも、どこにおいても、そして誰においても必ずこの「奇蹟」と思える素晴らしい出来事が結果するのです。なぜならば、これは「奇蹟」ではなく「法則」だからなのです。

こうして途方に暮れるほど長い間、どうすることも出来なかった心傷つき病んでいたウルトラ良い子とその家族の上に、闇夜は去って日が昇り、喜びと感謝と勝利に満ち溢れた完全な「癒しの朝」が巡ってくるのです。あれほど恐れ、忌み嫌い、何も取り込むことの出来なかった彼らが、何と自ら望んで、しかも勇気をもって「自己変革」することを喜び期待し、立ち上がり始めるのです。これこそ何と喜ばしいことでしょう。皆さん、この素晴らしい出来事の到来を信じられますか。ぜひ信じて下さい。それが今皆さんのご家庭でも起ころうとしているのです。ですから「アガペーによる全面受容」を、しっかり継続して下さい。何よりも「アガペー」し続けて下さい。そうです、「アガペー」の定義を思い起こして下さい。そして口ずさみ、心に深く刻み込み、「アガペー」をイメージしながら「アガペー」に向かって歩み続けて下さい。

 

「アガペーとは、相手のために、しかも自らに敵対し、不利益を与える相手のためにさえ、あえて自らの自己犠牲を甘受して、その相手の祝福のために、献げ仕えて行く、何一つ見返りを期待しない、心と生活である。」

 

何と幸いなことに、筆者の周りにはこのようにして癒され立ち上がった方々が、大勢おられます。それらの方々は、全国各地でこの大いなる喜びの体験を自分たちだけのものとしないため、互いに分かち合い、証しし励まし合っています。何よりも癒されたウルトラ良い子たちのその輝いた生き様は、どれほど同じような悩みと苦しみを辿っておられる方々への大きな希望となっていることでしょう。(続く)

峯野龍弘(みねの・たつひろ)

1939年横浜市に生れる。日本大学法学部、東京聖書学校卒業後、65年~68年日本基督教団桜ヶ丘教会で牧会、68年淀橋教会に就任、72年より同教会主任牧師をつとめて現在に至る。また、ウェスレアン・ホーリネス教団淀橋教会および同教会の各地ブランチ教会を司る主管牧師でもある。

この間、特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン総裁(現名誉会長)、東京大聖書展実務委員長、日本福音同盟(JEA)理事長等を歴任。現在、日本ケズィック・コンベンション中央委員長、日本プロテスタント宣教150周年実行委員長などの任にある。名誉神学博士(米国アズベリー神学校、韓国トーチ・トリニティー神学大学)。

主な著書に、自伝「愛ひとすじに」(いのちのことば社)、「聖なる生涯を慕い求めて―ケズィックとその精神―」(教文館)、「真のキリスト者への道」(いのちのことば社)など。

感謝、賞賛の言葉を豊かに注ぐ 自尊心の回復